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事例紹介

2026.1.15

愛媛

現場の要望をもとにソフトを作成
システム専門の部署がある強み

古くから地域医療を支える存在
道後温泉近く、松山市中心部に近く立地する奥島病院。初代院長が1915年(大正4年)に松山市一番町にて開院し、戦災による消失や移転を経て、現在は二次救急輪番制の病院として地域の救急医療の一端を担っている。愛媛大学大学院医学系研究科から多くの専門医が非常勤医師として派遣されており、同院の常勤医師と密に連携を図りながら、専門性の高い治療やリハビリテーションに取り組んでいる。
奥島病院
システム専門の部門を設置
奥島病院には、診療情報管理室があり、その中にシステム関連の業務を一手に引き受ける部門がある。現在は4名体制で、うち2名は診療情報管理士として患者の診療記録・情報を適切に収集・管理。室長の渡邊亮氏を含む2名は院内の医療システムについての運用管理を主に行なっている。
渡邊氏は、以前は兵庫県神戸市のソフトウェア開発企業で10年以上働いており、医療業界とは特に接点がなかったという。氏が奥島病院に勤めるきっかけになったのは、同院への電子カルテ導入だった。一般的に、病院に在籍しているのは医療の専門家や事務を行う人材ばかりで、システムに精通した人間はいないことがほとんどだ。今まで手書きの紙のカルテでやりとりしていたものが、システムに詳しい人間がいなくても電子カルテを導入して大丈夫なのかといった不安は、どこの病院にも共通してあった懸念事項だった。
奥島病院に勤める知人から相談を受けた渡邊氏は、病院向けに作られたシステムだから専門家がいなくてもなんとかなるだろうけれど、もちろん詳しい人がいたほうがいろいろと利点があるとアドバイス。そして知人の誘いを受けて2013年(平成25年)から奥島病院に入り、電子カルテの導入を進めていくことになった。
電子カルテは段階的に導入
電子カルテ導入にあたって、院内の意見はさまざまだった。一気に導入して利便性を高めたほうがいいという人がいる一方で、デジタル機器に不慣れなため段階を踏んで導入していきたいという人も多くいた。特に年配のスタッフは、このシステムが扱えなければ退職することになるのではないかという不安が強かったという。
どちらの進め方にもメリット・デメリットがあるが、奥島病院では2014年(平成26年)にオーダリングシステム、翌年に本格的な電子カルテシステムというように、段階的に導入を進めていくことになった。その際、診療情報管理室だけが動くのではなく、パソコンなどのデジタル機器の扱いに慣れている若い世代のスタッフが不慣れな人をサポートするなど、全体で協力しながら進めていった。
大手ベンダーの電子カルテシステムを採用
奥島病院では、富士通の電子カルテシステムを採用している。電子カルテシステムは2年に1度の改定を含むシステムアップデートが頻繁に発生するためベンダーの企業体力も考慮し選定する必要がある。以前から富士通製の会計ソフトを利用していたこともあったが、富士通は大規模病院向けの電子カルテ市場ではトップクラスのシェアを誇っており、大手ベンダーならではの対応の安定感や信頼性の高さがあることから採用が決まった。クラウド型のほうが災害やサイバー攻撃からのデータ保護と事業継続性は高いものの、定期的なシステム停止を含むメンテナンスが行われるため救急担当の日と重なるリスクを考慮し、同院ではオンプレミス型を活用している。
オンプレミス型もメンテナンスは必要で、同院では3か月に1回、電子カルテシステムのサーバーを1時間ほど停止させてメンテナンスしている。しかしシステム部門を設置している強みも生かし、救急担当と離れた日付で停止時間は比較的電子カルテの利用が少ない時間帯(主に20〜21時ごろ)にメンテナンスすることで、業務への影響を減らしている。
また、災害や大規模障害などによりサーバーが長時間停止になった場合に備えて、以前利用していた紙の様式も保管している。ただ、現在までの病気の経過やどのような指示が出ているかなどの情報は電子カルテに入っているため、停電などで電子カルテを閲覧できない緊急時にどう対応していくかはベンダーと相談を重ねているところだという。
現場の要望で独自のアプリケーションを開発
電子カルテ以外にも、PACS(医療用画像管理システム)や各部門システムを導入しているが、さらに自院に必要なアプリケーションをオリジナルで開発している。
たとえば診療に関わるものでは、電子カルテから入院の患者アレルギー情報をピックアップして一覧にするものや、従来は入院が決定した患者の情報を紙に転記して関係部署に伝達していたが、電子カルテからリアルタイムで一覧表示することで、さっと確認できるようにするものなどを開発。
また、事務に関わるものでは、患者の病名ごとの医療区分の割合を確認するもの、今までは手で集計して計算していた平均在院日数を自動で計算して出すものなどを作成。医師からの要望で、翌診療日までに放射線検査の読影レポートを作成できている割合を確認できるものを作成したこともあった。
直接診療に関わらないところでは、医師がどこでログイン・ログアウトしたか最終履歴を確認できるようにした。これは、スタッフが医師の現在の場所を推測して直接相談しにいったり、今電話をかけていいかどうか判断したりするのに活用しているという。
院内の課題に対して、必要なソフトやアプリケーションを自院向けにカスタマイズして作成でき、さらに運用中のアップデートも迅速に対応できるというのは、システム管理の専門スタッフが常勤している強みだ。直接売上につながる部署ではないため、自院に設置するか否かは経営判断が難しいが、ある程度以上の規模の病院であればシステム専門の部署があったほうが確実に便利だと渡邊氏は考えている。実際、現場の要望を聞きながら日々の作業を圧倒的に楽にしてくれるソフトを作成したり、電子カルテの利用に問題が発生した際のベンダーとのやりとりも一任して行うことで現場負担の軽減を行なったりと、診療情報管理室があって良かったという声はいくつも上がっているという。
ICT化からDXへ
とはいえ、現在はまだ院内でデジタル化できていない部分が多く、現場の要望を聞きながら徐々にICT化を進めている段階だ。これらを業務改革に活かしていく本格的なDXはこれから取り組むべき課題と考えている。
たとえば、電子カルテの情報をもとに、一般病棟から地域包括ケア病棟に移動した時期が適切であったか検証するために同院で開発したツール。従来はケア病棟への移行が遅いケースが散見されていたが、このツールを活用するようになった現在では適切なタイミングでの移行ができており、効率的なベッドコントロールにつながっているという。
他院とも積極的に情報交換し、このようにシステムを導入・運用して業務が改善された成功事例があれば、開発・導入を検討していく心構えだ。
奥島病院
スタッフにも患者にも喜ばれる病院へ
現在は院内のさまざまな業務に関わるシステムの開発を主に進めているが、今後は外来患者の利便性に関わる部分のICT化を進めていきたいと考えている。具体的には再来受付機や精算機の導入を想定しているが、診察後の会計待ちの時間を減らすべく、電子カルテや医事会計との連携をとって後払いも選択できるようなシステムを入れられないかとも検討している。
従来通りのやり方だと、病院にかかるだけで一日仕事だ。受付をして検査を受け、検査結果が出て診察の順番が回ってくるのを待ち、診察後は精算が終わるのを待って会計をし、ようやく処方箋をもらって帰ることができる。複数科を受診している場合は診察の順番待ちや会計待ちの時間がより長くなる。通院にかかる時間の大部分が、ただ待つ時間として費やされるのだ。
病院のDXは、医療スタッフの利便性や効率性を高めてくれるが、同時に患者の不必要な長い待ち時間を減らすことにもつながっていく。病院に関わる誰もが笑顔になれる環境をつくっていくことが、DXを進めていく大きな目的でありモチベーションとなっている。
奥島病院

医療法人 団伸会 奥島病院
診療情報管理室 室長
渡邊 亮 様

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