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事例紹介

2025.12.17

愛媛

日々進化する技術を積極的に活用し、地域医療のさらなる充実へ貢献

住友別子病院
新居浜市の医療を支える歴史ある病院
愛媛県新居浜市は、1691年(元禄4年)の住友家(現在の住友グループ)による別子銅山開坑によって大きく発展したまちで、四国屈指の工業都市として知られている。世界有数の銅の産出量を誇った別子銅山の開発・採掘によって、住友家は日本三大財閥と呼ばれるまでに成長した。企業城下町として住友グループとともに歩んできた新居浜市には、現在も住友グループの象徴的な存在である住友金属鉱山、住友化学、住友重機械工業、住友林業の「新居浜4社」の事業所があり、地域の経済や文化に深く関わっている。
かつて銅山の最盛期に鉱夫やその家族が住んでいた別子山村には、住宅や学校はもちろん、病院や銀行、劇場、料亭、百貨店などもあったという。「住友別子病院」は、1883年(明治16年)、住友金属鉱山の従事者とその家族の診療を目的として開設された。1966年(昭和41年)には現在地へ移転するとともに一般社会保険診療の取扱いも開始し、現在では東予地方最大規模の360床を有する、地域になくてはならない基幹病院となっている。
院内ネットワークを一元化
愛媛県で最も歴史の深い住友別子病院だが、やはり現代においてICT化は必須の課題だ。日々訪れる多数の患者に迅速かつ正確に対応するため、同院では比較的早期からシステムのICT化が進められてきた。2003年(平成15年)には医師と看護師、各部署の指示をコンピュータを介して伝達するオーダリングシステムを、2009年(平成21年)には放射線画像の完全デジタル化とともに、電子カルテシステムを導入した。
一方で、長く続く病院だからこそ、施設の老朽化は避けられない。現在地への移転から50年ほどが経ち、施設の建て替えを行うことになったが、ここで課題となったのが院内ネットワークの新規構築だった。
旧病院では、電子カルテなど個人情報を扱う「基幹系」、通常業務で職員が情報をやり取りするための「情報系」、職員が所持する院内PHSやナースコールに関わる「音声系」、来院者用の無線LANを司る「開放系」、監視カメラや電子錠などを扱う「セキュリティ系」の5つのネットワークが、それぞれ独立して動いていた。しかし、ネットワークが分かれていることで、物理的な配線が煩雑になり、維持管理に多大なコストが発生していることが課題となっていた。
そのため、2016年(平成28年)の病棟の建て替えとともに、これらのネットワークを物理的に一元化した。SDN(Software-Defined Networking)*1を活用し、1つの物理ネットワーク上に5種のネットワークを統合。機器の削減に伴って構成がシンプルになり、運用管理の効率化が実現した。なお、各ネットワークは論理的に独立しているため相互に影響を与えることはなく、通信品質やセキュリティも確保されている。
*1 ネットワークをソフトウェアで制御する概念。
住友別子病院
連絡手段は2系統に
ただ、ここで新たな課題が出てきた。同じネットワーク上に全てのシステムが載っているため、どれか1つのシステムがトラブル発生やメンテナンスのために停止すると、他のシステムにも影響が及ぶことになったのだ。
そこで、ネットワーク統合時に導入した職員用スマートフォンは、院内ネットワークから独立させることにした。このスマートフォンは、将来的なサービス向上への対応や現場での各種情報の利活用を見据え、従来のPHSの代わりに導入を決めたものだった。有線内線電話は院内ネットワークを、無線内線電話はキャリアの電波を利用したスマートフォンとする2系統とすることで、トラブル時にも情報伝達に支障がないように構築する予定である。
情報伝達に便利なチャットの活用を
さらに、現在は主に電話機能の活用ばかりにはなっているが、2025年度末の機器の入れ替えのタイミングでチャットの導入を考えているという。他院の成功例では、さまざまなDXの施策の中でもチャットの導入が特に大きな成果を挙げていると聞いていた。しかし、現場のスタッフのなかには、「文章を考えて文字を打つよりも電話で連絡するほうが早い」とチャットの活用に抵抗がある人もいる。
そこで、チャットはいきなり全体で導入するのではなく、使いたい人だけ使ってみるというスモールスタートで取り組むことにしている。チャットの利点は、相手の都合や時間の余裕にとらわれることなく情報を伝達できて、相手の都合のいい時に確認・対応してもらえることだ。日常生活でも電話とチャットをうまく使い分けている人が大多数であることを鑑みると、緊急時は電話でそれ以外はチャットを使うなど、利用が広がっていくのではないかと考えている。
地域医療のために病院間で連携を図る
住友別子病院では、地域の医療をより良いものにしていくために、他院との連携をもっと強化していきたいと考えている。ひとりの患者がかかりつけ医と総合病院、または異なる診療科の個人病院など、複数の病院にかかるのはごく一般的なことだ。既往症、アレルギーの有無、現在かかっている病気や服用中の薬などの情報を病院間で共有できれば、医師と患者双方の利便性も高まり、より安心・安全な医療の提供につながる。
かつて新居浜市の主要4病院(住友別子病院・十全総合病院・愛媛県立新居浜病院・愛媛労災病院)と市で地域連携について協議をしたこともあったが、住友別子病院の建て替えのタイミングであったことや予算の関係などの要因が重なり、その時には全体の連携は実現しなかった。今のところ、住友別子病院では医療系システムのASTROSTAGEを導入し、同意を得た患者の電子カルテ情報を提携したクリニックに提供している。
現在、国の「電子カルテ情報共有サービス」の整備が進んでいるが、地域の病院間で提携を結ぶ、あるいは愛媛県医師会全体で取り組むなど、デジタルでのスムーズで迅速な地域連携が実現するのであれば積極的に参画していく構えだ。
AI技術の積極的な利活用へ
世間一般では、近年急速にAI技術の利活用が進んでいる。医療業界においても例外ではなく、AI活用による新たなサービスが日進月歩で生み出されており、会合や勉強会などではAIに関する話題で持ちきりだという。
特にAI利用が進んでいるのが画像診断の分野だ。住友別子病院でも、頭部や心臓を瞬時にとらえることができ、被ばく線量の大幅な低減とより鮮明な画像取得を実現した最新のCTを導入済。AIが画像を自動解析し、異常が疑われる領域を検出するなどの機能を持つ読影支援ソリューションを導入しており、今後はリアルタイムで病変を検出する内視鏡AIも機器更新のタイミングで導入を考えたいとしている。
また、医師や看護師の仕事のなかでも負担の大きいのが日々の記録作業。カルテや看護記録は非常に重要ではあるものの、記録のために残業時間が増えてしまうなど、業務上の課題となっていた。
住友別子病院では、診察や看護時の患者との会話を音声認識し、SOAP形式の要約を自動出力するAIを導入する予定である。会話内容を逐一書いていた従来と比べ、サマリーの作成も容易で、圧倒的に事務作業時間の短縮が図れると期待している。
今後は、AI診断を参考にしながら総合的に医師が診断を下したり、AIに作成させた動画を見せながらインフォームドコンセントを得たりと、AIとの共存・協業を前提とした業務を組み立てていくようになるのではないかと予想。より良い医療のために、他院の成功事例も参考にしながら、最新の技術やサービスも積極的に取り入れたいと考えている。
住友別子病院

医療法人 住友別子病院
総合支援部 医療事務センター
システム課長 兼 診療情報管理課長 センター長
乗松 篤 様

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