事例紹介
2025.10.9
- 愛媛
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医療DXの力で拓く、地域医療の新たな一歩
- 「地域のかかりつけ医」として
- 愛媛県松山市の「おち内科・ペインクリニック」は、がんや慢性疾患、肩こり・腰痛など、体の痛みにさまざまな治療法で対処する個人医院だ。闇雲に痛み止めを行うのではなく、丁寧に話を聞きながら痛みの原因を探り、元から痛みを断つことを重視している。
越智貴紀院長は、自治医科大学を卒業後に愛媛県南予地方で地域医療に携わり、愛媛県立中央病院で麻酔科医として勤務したのちに開業。「地域医療に貢献したい」という強い思いから、専門であるペイン外来のほか一般内科や発熱外来、救急診療、予防接種や健康診断といった予防医療まで、体の不調を何でも相談できるかかりつけ医として日々の診療にあたっている。 - 積極的に新しいものを取り入れる
- 日進月歩で進化していく医療分野において、より安心・安全で効果の高い治療を提供したいと考えた場合、新しいことをどんどん吸収していく継続的な努力が不可欠だ。越智院長は、常に患者のためになる医療、利便性が高く安心して通えるクリニックを目指し、新しい医療やデジタル技術も積極的に取り入れている。
診療予約はもちろん電話でも受け付けているが、自分の都合のいい時に空き状況を見ながら簡単な問診まで記入できるWEBでの予約も受け付けている。電子カルテを導入し、レントゲンやエコーで撮影した画像は無線LANですぐに電子カルテに入るようになっているので、検査から診療までがシームレスで従来よりもスピーディ。検査機器も、CTやMRIをはじめ、レントゲン、血液検査の分析機器、高機能心電計、最新のPCR診断装置などの先進機器を揃えている。 - 個人病院でCT・MRIの導入
- さまざまな痛みの治療を施すにあたって、検査などで原因を正確に特定することは非常に重要だ。おち内科・ペインクリニックでCTとMRIを導入したのは2023年。どちらも装置自体が非常に高価で、さらに設置には専門的なスペースが必要なこともあり、個人医院で両方設置しているところは多くない。おち内科・ペインクリニックでも、以前は大病院に紹介して検査を受けてもらい、その結果に基づいて治療を行っていた。
しかし、今まさに痛みを抱えている人に、別の病院に行って長時間待ち、検査を受けてまたこちらの病院に来てもらうのでは苦痛が大きくなる。一般内科や救急診療なども行っているため、CTがないと診断がつかないケースも多かった。患者も増え、これだけ紹介する頻度が高いのであれば、自院でCTもMRIも撮れたほうが利便性が高く、結果としてクリニックを頼りにして来てくれる患者のためにもなると考え、両機器の導入に踏み切った。 - 遠隔画像診断の活用
- CT・MRIの導入と同時に、「愛媛画像診断支援センター」による遠隔画像診断も取り入れた。腰椎などのわかりやすい部位や、肺炎・腹膜炎・脳出血などの緊急に対処が必要な病変などは越智院長自身が読むことができるが、肩や膝といった構造が複雑な部位や、がんの疑いがある場合などは、やはり専門の放射線科医に読影してもらったほうが安心だ。同時に写っていた別の箇所に思わぬ病気が潜んでいた場合の、見落としのリスクも低減できる。遠隔画像診断を活用することによって、患者にとっても病院側にとっても、安心・安全な検査体制を整えられたという。
遠隔画像診断を取り入れる場合の通信環境も、電子カルテを導入しているためにほとんど障害はなかった。クラウド型はもちろんだが、おち内科・ペインクリニックで採用しているオンプレミス型の電子カルテでもメンテナンスなどの関係で外部から接続できるようになっていたため、支援センターとの画像や情報のやりとりは問題なく行えた。
もちろん遠隔画像診断の利用料はかかるが、見落としや曖昧な診断を下すリスクを考えると、これは“安心料”であり必要経費だと越智院長は感じているという。
読影結果は、緊急でなければ3営業日(支援センターの営業日)以内に返信されることになっているが、翌日には返してもらえることも多いという。1時間以内には診断をつけて処置をしたいというような切迫した事例への対応が難しいなどの課題はあるものの、常駐の放射線科医や複数の専門科の医師が揃っているわけではない個人病院において、自院のみでそこまでの対応は難しい。後日大病院で検査を受けてさらにかかりつけ医に戻って来てもらって……と何日もかかっていた従来のケースと比べると、ほとんどの例で確実性に加えてスピーディさもかなり向上した。 - 地域住民のオープン検査も受け入れ
- おち内科・ペインクリニックでは、CT・MRIのオープン検査も行っている。せっかく設置した機器を有効活用するため、検査の希望があれば他院の患者も広く受け付けている。大病院への紹介だと枠があまり空いておらず検査までに期間が開いたり、病院での待ち時間が長かったりするが、おち内科・ペインクリニックではWEBに公開された空き状況を確認して日時を選べるほか、急な依頼にも対応可能。受付から検査、会計まで迅速に行い、院内の滞在時間を短くするようにも努めている。
このオープン検査の場合は、全てのケースで愛媛画像診断支援センターの読影を依頼。撮影するだけでなく、放射線科専門医によるしっかりした所見をつけて主治医に戻している。 - 全てはより多くの患者のために
- 今後は、CTやMRI自体にAIによる画像診断を組み込むようなシステムが世に普及すれば、導入を検討していきたいと越智院長は考えている。
また現在、国が主導する「電子カルテ情報共有サービス」の本格的な始動が目前となっているが、クラウド上で診療情報提供書の内容や撮影画像・読影情報などを見られるようになればかなり便利になるのではないかと考えているという。
よりスピーディに診察を行えるようになれば、それだけ患者に向き合う時間が増え、より多くの患者の診察にあたることができる。痛みに悩む人の苦痛を少しでも軽くしたり、健康に不安を抱える人に寄り添って適切な治療やアドバイスをしたりできる。越智院長は、「地域のかかりつけ医」としてまっすぐ全力で診療にあたるため、積極的に医療DXに取り組んでいる。
おち内科・ペインクリニック 院長
越智 貴紀 様